Q: 田中茂雄さん(仮称)64歳は大学卒業後民間企業に25年以上勤めた後、60歳で定年退職をしました。そんな茂雄さんは64歳から特別支給の老齢厚生年金を受給しており、65歳になったら老齢基礎年金と老齢厚生年金を受給するつもりでした。しかしながら、大変不幸なことに65歳を目前にして急な病で死亡してしまいました。茂雄さんには妻の恵美さん(仮称)60歳がいます。恵美さんは独身の時に民間企業でOLを数年していましたが茂雄さんと婚姻後はずっと専業主婦をしておりました。子供は全て成人しています。恵美さんは何らかの年金を請求できるのでしょうか?
A:このケースの場合、茂雄さんは25年以上厚生年金の被保険者だったので遺族年金の受給資格期間は満たしています。茂雄さん死亡時に恵美さんは生計維持要件を満たしているとして、恵美さんは中高齢の寡婦加算がついた遺族厚生年金を受給できる可能性があります。
中高齢の寡婦加算は令和6年度の額で年額61万2千円です。恵美さんは65歳になるまでの間、遺族厚生年金にこの中高齢の寡婦加算が加算されます。遺族厚生年金の基本額が75万円として、中高齢の寡婦加算を足すと総額136万2千円です。
中高齢の寡婦加算は65歳までしかつきません。それでは恵美さんが65歳になると遺族厚生年金の額はがくんと減るのでしょうか?確かに中高齢の寡婦加算が無くなる分、遺族厚生年金の総額はがくんと減ります。しかし、恵美さんは65歳から自分自身の老齢基礎年金と老齢厚生年金を受給できるので、恵美さんの経歴を考えると、中高齢の寡婦加算を上回るか同程度の年金額となりそうです。(65歳以降は遺族厚生年金の基本額も恵美さんの老齢厚生年金と調整されますが総額は変わらないので気にせず進めます。年金を専門とする人間は先充て調整と呼んでます。)
この仮のケースの場合、恵美さんの今後の生活は65歳以降もなんとかなりそうです。では、恵美さんの経歴がこのケースと違う場合を考えてみましょう。例えば、恵美さんは学校卒業後、小さな商店でアルバイト程度の働きを長い間続けており、その間は国民年金だけでした。国民年金保険料もほとんど未納でした。茂雄さんとは40代の頃に出会い意気投合して結婚しました。子供はいません。
この場合、茂雄さん亡き後に恵美さんは中高齢の寡婦加算がついた遺族厚生年金を65歳まで受け取るとして、65歳以降が大変です。何故なら、中高齢の寡婦加算がなくなった後、恵美さんは自分自身の老齢基礎年金を受け取るのですが、過去の国民年金保険料の未納期間が大きく影響してしまい恵美さんの老齢基礎年金の額は低く、中高齢の寡婦加算をカバーできるような金額ではありません。頼りにしていた茂雄さんを亡くした後の恵美さんの生活はどうなるのでしょうか。
このように年金は受給できる額も人により様々です。若いころには国民年金保険料の未納もあまり気にならないかもしれませんが、いざ年金受給する年齢になるとあの当時の未納が悔やまれるというケースは大いにあるのです。
ちなみに、茂雄さんが会社員として勤めた期間が20年もない場合は、中高齢の寡婦加算はつきません。中高齢の寡婦加算がつく場合、つかない場合というのもあるのです。